元徳島ヴォルティスGKだった、阿部一樹さんを覚えてますか?
2014年に現役を引退された阿部さん。現在、阿部さんは徳島市内の新町川沿いで、完全マンツーマン指導のパーソナルジム「PRIVATE SPACE FAMIGLIA」を経営し、トレーナー兼実業家としてセカンドキャリアを歩み、活躍されています。
今回のインタビューは、そんな阿部一樹さんにお話を聞かせて頂きました。そして、インタビュー前にはまったく想像もしていなかった
「10年後、徳島にゴールキーパーアカデミーを作る!」
という壮大な夢を聞かせて頂きました。
今はパーソナルジムの経営、事業拡大に全力投入の阿部さんですが、それはサッカーに専念できる環境を作るための基盤づくりだったのです。
追記(2022年12月13日)
阿部さんはこの記事から3年後「塩谷サッカースクール・ゴールキーパークラス」を手伝う形で、子どもたちにゴールキーパー指導を行っております。詳しくはコチラ。

目次
悔しい現役時代
阿部さんは、生まれも育ちも徳島市という生粋の徳島人。
少年時代から八万SC、プルミエール徳島SCとサッカーをされた阿部さん。中学卒業後の進路を考えた時、当時まだ徳島ヴォルティスにはユースチームが無かったため、単身愛媛県の高校に進学するとともに、愛媛FCユースに入団しました。
そして愛媛FCユースで実力をアップさせた3年後、見事愛媛FCトップチームに昇格、プロ入りを果たします。しかし、愛媛FCはわずか二年で契約を満了とされてしまいました。
その後阿部さんは、2008年にヴォルティスの下部組織である徳島ヴォルティスセカンドに入団。四国リーグではコンスタントに13試合に出場してさらに実力を磨くと、翌年2009年には晴れて徳島ヴォルティスのトップチームに昇格、再びプロ選手になりました。
それからは、セレッソ大阪へのレンタル期間(半年)も含めて6シーズン、徳島ヴォルティスの一員としてチームメイトと切磋琢磨する日々を送りました。
ただ、徳島ヴォルティスでもトップチーム正GKへの壁は厚く、試合に出られない日々が続きました。
徳島ヴォルティスがJ1にいた2014年。クラブは最下位で再びJ2への降格が決定、そして阿部さんにはシーズン終了後にクラブから契約満了を伝えられました。
そして、そのまま現役引退。試合に出る事がないまま現役生活を終えられました。
ヴォルティスのJ1昇格がサッカー人生一番の喜び
試合に出られなかった現役生活。阿部さんは、非常に悔しい思いだったはず。
しかし阿部さんは愛媛FC時代に、苦労の末所属チームの正GKになった羽田敬介さんを間近で見ており、羽田さんから話を聞いていたので、試合に出られなくても決して腐ったりはせず、いつ出番があっても大丈夫なように、と黙々と練習に励んだそうだ。
試合には出られなかったが、2013年チームはシーズン4位。
4チームで争う昇格プレーオフを勝ち抜いて悲願のJ1に昇格しました。昇格決定直後、国立競技場の観客席をバックに、徳島ヴォルティス関係者が喜びを爆発させる写真が残っていますが、阿部さんも最高の笑顔です。
J1チームの一員だった事は僕の誇りです
チームために自分に出来る事を、それは自分のためにもなる
阿部さんはチームがJ1に上がり、J1の舞台で戦う。
そのために自分がチームのためにできる事をする、という経験は、まわりまわって自分のためになる…と考えていたそう。
ある選手がアフター(居残り)でシュート練習をしようとしていたら、ゴールにキーパーが立つだけでもシュート練習の密度は濃いものになるからと、阿部さんは自分が怪我しないように気をつけつつも、できるだけそのような練習には協力しました。
徳島スポーツビレッジによく練習見学に来ていたサポーターの中には、このような阿部さんの姿をいつも見ており「縁の下の力持ち」と評価してる方もいました。
人と人を繋ぐ事は得意
徳島ヴォルティスに入団した時はチームで一番年下だった阿部さん。
しかし、年を経るうちに、少しずつチームメイトが移籍したり、引退したりして、気づけばチーム在籍年数も上位になり、年齢的にも中堅になっていました。
そこで阿部さんは、それまで以上に積極的に多くのチームメイトと関わっていき、チームの雰囲気が悪い時は特に率先して若手とベテランの間に入って、橋渡しのような役割をしたそうだ。
自ら「得意」と言い切る、この「人と人を繋ぐ事が出来る」コミュニケーション能力は、経営者になった今でも阿部さんの大きな武器になってます。
阿部さん、ボディデザイナーになる宣言
2014年の夏、その年限りでクビ(契約満了)を宣告されるだろうという雰囲気を察した阿部さん。
それまでも、阿部さんは日常的に様々な分野の方と食事をしたりお話を聞いたりはしていたそう。
だが、この時期から現役引退後の事を考えるため、より一層明確な意識をもって経営者の方々と会って、色々な話を聞いたりしていったそう。
- サッカースクールのコーチはどうだ
- 不動産屋に来ないか?
- 東京の飲食店に来ないか?
など、いくつものお話を頂いたそうだ。そんな中に「ボディデザイナー」にならないか、というお誘いがあったそう。
阿部さんは自分の大きな身体を活かせる「ボディデザイナー」という仕事に興味を持ちました。
また、成功している経営者の方々からは、「成功するには何かの面で一番になる事が大事」と聞いた事が何度もあり、阿部さんの印象に残っていたそう。
当時、まだ徳島にはパーソナルジム、プライベートジムはありませんでした。そこで阿部さんは一大決心をします。
そう決めた後の阿部さんは早かった。
大阪のジムにボディデザイナーのノウハウを学ぶために4ヶ月間みっちりと研修。それまでパソコンなんて一度も触った事もなかったので沖浜のパソコン教室に通った。
ジムの運営に必要な経理の勉強をするために税理士さんに教えてもらった。
お金がないので銀行に頭を下げ、事業内容を説明して融資をもらった。さらにはテナント探し…などなど。
…と、阿部さんはとにかくやるしかない状況に自らを追い込みました。このあたりの追い込み方というのが元プロのスポーツ選手らしいですよね。

最初のお客様は3人、今では120人に
阿部さんが運営されているジムの名前は「PRIVATE SPACE FAMIGLIA」。

パーソナルジム「PRIVATE SPACE FAMIGLIA」を開業した当初、まず元から親しかった知り合いの経営者の方が3人、トレーニングに来てくれたそうだ。
最初は3人からスタートしたお客様。今では延べ120人にもなったそうです。そして現在一ヶ月で担当してる方は50人もいらっしゃるそうだ。

距離感を大切に
実は阿部さんのジム「PRIVATE SPACE FAMIGLIA」は公式HPがない。今後も作る予定はないそうです。
どうやって集客しているのかというと、親しい人の紹介や、口コミで来てくれる人がほとんどだそうです。でも、親しい人だからといって決して慣れ慣れしくはせず、言葉使いにも気を遣っているそう。「ほどよい距離感」を持って、お客様と接する事を意識し、大切にしているそうです。
そして、阿部さんは常に人と「いい関係性」を保ちたいと考えていて、その人の良いところを見つけたり、何か出来ることはないか…と、そんな事をずっと考えているそうです。
そんな阿部さんの色々な面をお客様も見てくれて、信頼もしてもらえて、レッスン内容にも満足して下さっているから、お知り合いを紹介してくれている流れになってるのかな…と、そう阿部さんはご自分では分析されています。

一石二鳥のビジネスモデル
阿部さんのジムの会費、レッスン料は、一言でいうと「かなり高額」です。これは経営者層や「センセイ」と呼ばれる立場の方をメインターゲットにした料金設定なのだそうだ。
ではなぜ経営者層をターゲットにしたのか。
それは阿部さん自身が「経営者として成功したいから」というのが大きな理由だそう。経営者として成功するには「成功してる経営者の方の話を聞くのがいい」、それなら成功してる経営者の方しか来れないような料金設定にしよう…と考えたそうです。
ただ、単に料金を高くするだけでは、経営者の方は来てくれません。高額なレッスン料金に見合うように、ジムはホスピタリティ※溢れるものにしました。
※心のこもった手厚いおもてなし、歓待、思いやり

「ほどよい距離感」を大切にしつつも、懇切丁寧な指導、一人一人の目標に合わせたオーダーメイドのトレーニングメニューの考案、トレーニングに専念できるためのプライベートな空間づくりや落ち着ける内装、というように、セレブな経営者の方にも満足して頂けるように多方面に気を遣った運営をされているそうです。
ビジネスとして経営者層をターゲットにして、その方たちが満足できるような高品質なサービスを提供し、高額なレッスン料でも納得して払って頂けるようにする。
その一方で、レッスンの合間には成功者の方の参考になる貴重なお話も聞けてしまう…と、経営者として成功したい阿部さんにとって、パーソナルジムの経営は一石二鳥になっているのです。
僕のジムが負ける要素は一切ない
阿部さんのジムを訪れるお客様の目標は、本当に人それぞれ十人十色、だそうだ。
〇kg痩せたい、かっこいい筋肉をつけたい、といったものから、食事だけ見てくれ、一ヶ月に一回だけ目一杯追いこんでくれ、というお客様もいらっしゃるそうです。
阿部さんは、そんな一人一人のお客様それぞれの目標に合わせてメニューを作ります。同じメニューは一つとしてないし、阿部さんがお客様に合わせるから言ってる事もお客様によってバラバラ。お客様の目標と健康にむかって、一緒に全力でサポートしますよ、というのが阿部さんのジムの特徴です。
そう語る阿部さんの表情は自信がみなぎっていました。

徳島にゴールキーパーアカデミーを作る!
阿部さんのジムは、初のFC店が最近(2018年7月)羽ノ浦にオープンしました。ちなみにこのFC店のトレーナーさんは元徳島ヴォルティス、現カターレ富山在籍の佐々木一輝選手の従弟(いとこ)の方だそうですよ。
パーソナルジムの経営は、阿部さんの努力や気遣い、先見の明、そして行動力によって、軌道に乗ったと言えそうです。FC展開をされるという事は今後もお店を増やして、事業を拡大していくのかなと思って阿部さんに尋ねてみました。
いきなりの急展開でした。
阿部さんがパーソナルジムの事業を拡大されたい理由、その先には徳島にゴールキーパーアカデミーを開設したい!という夢があったからだったのです。
サッカースクールではお金は儲からないので、今のうちにバリバリ稼いでお金を貯める、ジムもFC展開を進めて店舗数を増やしていき、自分が現場にいなくてもお金を入ってくる仕組みを作っている過程だ、という事なのです。
まず、これからの5年でFC展開にメドをつけたいと阿部さんは考えています。そして、その後の5年で徳島ゴールキーパーアカデミー創設への活動や、その時点での最新のゴールキーパー理論や指導法の勉強に専念する…という考えです。
阿部さんの青写真通りにいけば、10年後には徳島にゴールキーパーアカデミー出来る事になります。とても楽しみな事が聞けました。

ヴォルティスの選手が移籍してしまうのは、徳島サポーターの負の影響がけっこうある
阿部さんには、現在のヴォルティスサポーターの方に伝えたい事についても聞いてみました。
ヴォルティスの選手って移籍しちゃう事が多い。阿部さんによれば、これって実は徳島ヴォルティスというクラブだけの問題じゃなくて、サポーターによる負の影響も結構あるということだ。
せっかく徳島に来てくれた良い選手なのに、サポーターの心ないヤジやSNSや掲示板などへの投稿に傷ついているという事って本当に多いんです…と阿部さん。
ヤジったりするサポーターの方は、その選手が目の前にいたり、その選手の家族、知り合い、友人がすぐ隣にいても同じ事が言えるんですか?…と。実際に選手の関係者は、関係者席だけじゃなくスタジアムのあちこちにいらっしゃるそうだ。

逆にいえば、選手への声援は本当に支えになっているそう。試合での「頑張れ!」という声はピッチの選手にも届いているそうだ。もちろんゲーフラが目に入れば、その選手は本当にとても嬉しいそう。
阿部さんによれば、サポーターがTSV(徳島スポーツビレッジ)に練習を見に来てくれる事も、とてもチームを支える事に繋がっているそうです。
練習あがりの交流タイムで、選手に後押しの言葉を頂ければ選手にはすごく力になっている。
また、練習を見に来てくださるサポーターが多いと、選手同士でも「今日はたくさん来てくれてるね」という話にもなるし、練習にも緊張感が出てピリッと締まったものになるそうだ。練習の質が上がれば、それはチーム力の向上になる、というわけです。
そういえばあまり徳島市の街中で選手を見たりとかしないですね。見掛けても外国人選手が多い気がします。
なんと…。これは非常に重いお言葉を頂きました。
と続けて阿部さんはおっしゃいました。阿部さんは元ヴォルティスの選手であり、現在でも現役選手との交流が密接な方です。とても切実な声として当ブログは受け取りました。
サポーターとしてもチームや選手に期待しているが故に、つい汚い言葉として出てしまったり、ネットに書き込んだりしてると思うんですが、それが選手を傷つけているとしたら、本末転倒ですよね。
選手はそんなの知らないだろ…と思うかもしれませんが、阿部さん曰く、かなりの確率で選手の知るところになってます、との事だ。
当ブログの記者である私自身も先日の天皇杯の後に「〇〇選手のミスがなあ…」とツイッターに書き込んでしまった(削除済みです)ので、今後そんな事はしないようにします。
どうか今回の記事を読んでくださったあなたも、ヴォルティスが試合に負けてしまった悔しさから、ある選手のミスをツイッターやブログ、掲示板などで愚痴ったり書き殴りたくなっても、そこをグッとこらえて頂けないでしょうか
それをしたところで、あなたの気分がスカッとするだけで、肝心のその選手に負の影響を及ぼしかねないし、そういう声や書き込みを知る事となった選手の家族、友人、お知り合い、その選手のサポーターの心情も察して、どうか控えて頂ければ…とお願いします。

サポーターの方は、ぜひスタジアムへ、そしてTSVへ
阿部さんがヴォルティスサポーターに一番伝えたい事は、やはりスタジアムに応援に来てほしいという事です。

徳島ゴールキーパーアカデミーは10年後、覚えておきましょう!
元徳島ヴォルティスGK阿部一樹さん。ボディデザイナーになり、パーソナルジムの経営というセカンドキャリアを歩まれており、もうサッカーから離れてしまったのかな…と思われていた方もいた事でしょう。
でも、今回お話しを聞いて分かったのは、阿部さんは最終的にサッカーの仕事に専念する、ゴールキーパーを育成するアカデミーを徳島につくる、という夢のために、今はパーソナルジムの経営を日夜頑張ってらっしゃるという事でした。
阿部さんは今後さらに事業を拡大されていく事と思いますが、それは単なるお金儲けではなく、徳島からゴールキーパーを輩出する!という夢に向かってるという事を意味しているので、この記事を読んでくれたあなたも、ぜひ阿部さんを応援してください。
そこのお金持ちのあなた!
ぜひレッスン生や、阿部さんのパーソナルジムのFC店オーナー(コレが一番阿部さんが喜びます)になってくださいね。
阿部さんの「徳島ゴールキーパーアカデミー(仮称)」は、今から約10年後に実現する予定の構想です。この記事をご覧になったあなたはぜひ覚えておいてください。
そして、小さなお子さんをお持ちの親御さん、身体が大きかったり、ゴールキーパーを目指しているお子さんだったら、ぜひ阿部さんの「徳島ゴールキーパーアカデミー(仮称)」に入れてくださいね!
阿部一樹さんも待ってます。

